七峯の丘から

鮮やかに掛け菖蒲 [令和6年5月5日]

「鳥居の掛け菖蒲」

「佐治家奉納甲冑」
 こどもの日、そして大安も重なり、境内は終日賑やかな一日となりました。
 宮司が神職となった約30年前は、連休中は御祈祷があまりなかった記憶があります。
 お祝い事の変化だと思いますが、以前は初宮詣などのお祝いでは御祈祷後の食事会で、仲人さんや親戚内にお声掛けをしたものでした。
 今は食事会も身内のみで行なう方が殆ど。広く声がけをしなくなったことも有って、連休中でもお祝いの御祈祷が増えたんじゃないかと、宮司の推論です。
 こどもの日とは祝日法の名称で、正式には端午の節供ですね。拝殿前の大きな鯉のぼりも薫風を孕んで、気持ちよく泳いでおります。
 当社では端午の節供に、鳥居と宮司家の門に掛け菖蒲を行なう風習があります。
 一般には菖蒲の葉を屋根の上に乗せたり、軒下に吊したりするのですが、当社では菖蒲の葉先を上向きにして、そこに蓬も添えて束にしたものを柱などに結びつけます。
 菖蒲は勝負に通じ、その形は剣にも見えますね。これが下向きでは縁起が悪いと考えられたのでしょうか。
 天保8年(1837)に佐倉藩命により藩士の中沢親長が取り纏めた「御貸具図式・おかしぐずしき」。
 役職に応じての甲冑や陣羽織などの意匠や寸法を取り纏めた書物になりますが、そこには兜の前立てについて「三本菖蒲」と記載されております。
 江戸末期に作られた当社所蔵の佐倉市指定文化財「佐治家奉納甲冑」にも、その兜には三本菖蒲が付けられており、現在の佐倉市花も花菖蒲。
 佐倉では古くから、菖蒲などが珍重されていたことが判りますね。
 節供とはお祓いや厄災除けの行事が元。今夜は菖蒲湯に浸かり、いつの間にか身についた厄災のもとを祓い清めると致しましょう。